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窯業系サイディングに必須のシーリング(コーキング)補修工事
現在のお住まいの主流となっているのが窯業系のサイディングです。この外壁は幅500mm、長さ3000mm程度の大きさ(製品によって変わります)のボードを組み合わせてつくられたもので、必ず繋ぎ目部分(目地)が存在します。ALCパネルの外壁も同じです。
これらの繋ぎ目部分に充填されているのがシーリング材(コーキング材)です。
外壁、いやお住まいの中でも最も重要な部分の一つなのですが、そもそも何のために施工されているのか、劣化してしまうとどのような不具合が生じてしまうのかを知らなければ多少の劣化は見逃してしまうかと思います。そのメンテナンスの怠りが非常に危険!そこで今回はシーリング材の役割はもちろんのこと、施工上の注意点等をご紹介したいと思います。
長い文章のページとなっていますので、内容を動画でもまとめています。動画で見たいという方はこちらをご覧ください!
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シーリング(コーキング)の役割
シーリング材やコーキング材と呼ばれる充填剤は、サッシ回り、キッチンや浴室などお住まいの水を使用する箇所・水に晒される箇所に使用されています。
このシーリング材の大きな役割は
の2点です。室内では防水機能が重視されますが、外装は常に雨水に晒されていますし、サッシと外壁などの異素材の取り合い部分は隙間が生じやすいためシーリング材が欠かせません。さらにサイディングやALC外壁はパネルですので目地と呼ばれる1~2㎝の隙間が等間隔に発生します。
現在のサイディングやALCよりも大きな面積の製品を作ることは技術的に難しいことではありません。ただ、大きくなればなるほど運搬しにくくなりますし、寒暖による伸縮があった場合、そのひずみも大きくなり、クラック(ひびや亀裂)が発生しやすくなります。
現場への運搬の問題、現場での運搬と施工性の問題、温度変化による伸縮を考えると自然と大きさは制限されてくるのです。
適度な大きさにし、その繋ぎ目に隙間を設けることによって伸縮を制限させない方がサイディングもALCも長持ちするのです。
そのためサイディングやALCの場合、施工にあたって必ず目地ができます。
この目地と呼ばれる隙間から雨水が入り込んでしまうと透湿防水シートを傷め雨漏りを起こしてしまう可能性があります。つまりパネル外壁にとって目地はなくてはならず、シーリング材は目地からの雨水浸入を防ぐために欠かせないのです。
ALC(autoclaved lightweight aerated concrete)とは
オートクレーブ処理で作られた軽量気泡コンクリートのこと。不燃材で内部に気泡を含むため、通常のコンクリートよりも軽く、外壁材などに使用される。
オートクレーブ処理とは高圧力をかけて行われる処理のこと。圧力鍋による調理と同じように高温にできることから、化学反応などを加速させることができる。
目地や繋ぎ目がない仕上げの外壁としてモルタル壁が知られていますが、こちらはクラック(ひびや亀裂)が入りやすいというデメリットがあり、工程数が多く、高価なことから現在では新築での施工が減っています。
モルタル外壁だからと言ってシーリング補修工事が必要ないわけではありません。サッシ廻り等はまず必須ですが、いざクラックが入ってしまったときに雨水が入り込まないよう補修をする際にもシーリング材が役立ちます。クラック補修時は塗装メンテナンスに支障がでないようシーリング材の種類に注意します。
シーリング(コーキング)の違いと種類
シーリング材、コーキング材と2つの名前を聞くこともあり「何が違うの?」と疑問に思う方がいらっしゃると思います。厳密にいえば意味も使用用途も違っていたようですが外壁塗装・住宅メンテナンス時におけるシーリングとコーキングは同じ意味・材料としてご説明しております。
私たち街の外壁塗装やさんが注意してみていただきたいのはシーリングかコーキングかではなく、使用するシーリング材の種類です。
シーリング材には多くの種類があり特性も違いますので当然施工箇所も変わってきます。通常、外壁に使用されるのはポリウレタン(ウレタン)もしくは変性シリコンですが、ホームセンターで見るとシリコン系やシリコンシーラントと呼ばれる製品も置かれています。
変性シリコンとシリコンは同じようにも感じますが、シリコンですと塗料の密着性が悪く上から塗り重ねることができません。これはどれほど時間が経過したとしてもです。
屋根・外壁材にかかわらずシーリング材を使用して補修する際には必ず、シーリング材の種類(特性)を把握した上で使用することをお勧めいたします。
縦目地・横目地
外壁を見てみると「我が家は縦に目地がある」「縦横どちらにもある」と別れるかと思います。サイディングの場合は縦横どちらか一方におよそ3mごとの目地があると思いますが、これはサイディングが縦張りなのか、横張りなのかによって異なります。
サイディングは長方形ですので短辺・長辺があり、張る向きによって異なります。
※図はニチハ株式会社、設計施工資料PDFデータ、設計施工資料集:モエン標準施工編 2019年版より参照
縦張り…
長辺が縦向きにある張り方で胴縁(下地木材)と目地は横向き、金属サイディングに縦張りが多くシーリングの施工箇所が少ない傾向にあります。また目地を設けていない外壁材もあります。
横張り…
長辺が横向きにある張り方で胴縁(下地木材)と目地が縦向き、窯業系サイディングの多くが横張りに合わせた製品が多くバリエーションも豊富です。
ALCに関してはサイディングよりもパネルが小さく厚く、縦横どちらにもシーリングが施工されているケースが多いかと思います。
シーリングの施工範囲が多いのは
となります。目地がないというお住まいでもサッシ廻りはシーリング材が打設されていますので、シーリング補修工事が欠かせないということを覚えておきましょう。
最も重要な部分の一つであれば、それなりに耐久性があって然るべきなのですが、そうはいかないのも現実です。シーリングは最も重要な部分なのに最も傷みやすいという不都合だらけの箇所なのです(15年超の耐用年数を誇るシーリング材もあります)。
目地に打設されたシーリング材は建物の立地や環境にもよりますが、短いときには新築から3年前後で、長持ちしたとしても7年位で傷みだし、劣化していきます。場合によっては外壁塗装よりも先に寿命が来てしまい、シーリングの打ち替えが必要となることもあります。
シーリングの補修工事自体は外壁塗装よりも大分お安いのですが、足場の仮設が必要となるため、結構な額になることがほとんどです。余分な足場の費用をかけないためにも、できるだけ外壁塗装と同時に工事なさることをお勧めします。
横目地(縦張り)と縦目地(横張り)についてご紹介しましたが、共通して言えるのはシーリングが雨水の浸入を防ぐものであり、雨水は上方から流れてくるということです。
横目地の場合…
シーリング材は横一方にありますが、雨水が目地部分を通過する際に目地を通って横走りするのです。
部分的な補修としたとしてもシーリング材が傷んだ部分から染み込む可能性がありますので全体的な補修が必要になります
→3mほど高い場所にあるシーリングをまとめて補修するには足場が必要不可欠です。
縦目地の場合…
高さ2mほどの場所でシーリング材の劣化を見つけたとします。その部分のみの補修は脚立でも可能ですが、雨水が上方から流れてくればシーリング材が傷んだ部分から浸入してしまいます
→縦目地1本の補修であってもはしごでの補修では安定性が保てず綺麗に施工できない、十分な打設ができません。
また他の縦目地も傷んでいる可能性がありますので足場を仮設しシーリング補修工事を行ったほうが最善です。
外壁や屋根と同じようにシーリング材も紫外線、雨、温度差によって劣化していきます。劣化を防ぐ成分が含まれていないわけではありませんが、こちらも紫外線、雨、寒暖にさらされているうちにどんどん消費されていきます。
安価なシーリング材は柔軟性を保つために【可塑剤】という成分を含んでいます。実は皆さんの生活の中でもクロスやクッションフロアー、輪ゴムなど身近なものにも含まれているのですよ。
輪ゴムの劣化を見たことがあるでしょうか。まず表面に可塑剤が染み出してきて、ベタベタしてきます。こうなるとお部屋の埃が付きやすくなり、かなり汚くなります。
染み出した可塑剤が乾燥してしまうと、今度は弾力性がなくなっており、引っ張ると伸びずに簡単に千切れてしまいます。
シーリング材も全く同じです。表面に可塑剤が染み出してきて、ベタベタするようになると汚れが付着し、その後は弾性がなくなり、痩せてひびや亀裂が入り、裂けて剥落していくのです。
シーリング材やゴム製品などを柔らかくするために添加される薬剤。紫外線、雨、温度変化、経年など様々な要因で添加された製品から分離していく。
この分離現象を「ブリード」と言い、汚れやすくなるだけでなく、痩せて硬化が進むのでシーリングにひびや亀裂、割れ、裂けが発生する。
シーリング材の劣化を顕著に表しているのがブリード現象と呼ばれる黒ズミです。外壁材等に染みつくため、洗っても落ちるものではなく住まいの美観性を著しく損ねます。ブリード現象の発生を防ぐ方法としては一つ、可塑剤が含まれていないノンブリードタイプのシーリング材を使用するということです。
になります。この工程で最も難しいと感じるのは養生です。
目地だけにシーリング材を打設するにはマスキングテープを目地に沿って綺麗に貼り付ける必要がありますが、実は凸凹としたサイディングに綺麗にテープを貼ることが非常に難しいのです。
この工程を確実に行えなければシーリング補修工事は綺麗に仕上がらず隙間もできる可能性がありますし、マスキングテープを剥がす際に外壁を汚してしまうこともありますのでプロにお任せしたほうが安心です。
費用の関係でシーリング補修工事のみを行うという方ももちろんいらっしゃいます。しかしできるのであれば外壁塗装とセットで行うことをお勧めしております。
というのもシーリング補修工事には足場が必要であり、シーリング材が露出していれば太陽光や雨水で劣化が進行してしまうからです。
足場を仮設する必要がある時点で費用もかかり、塗装の際にはまた足場を仮設しなければならないため、できれば一度で住宅メンテナンスを終わらせてしまったほうが良いでしょう。
シーリング補修工事には2つの種類があります
打ち替え
これまでのシーリング材を取り除き、新たにシーリング材を充填する
増し打ち
これまでのシーリング材の上にシーリング材を重ねて充填する
理想は打ち替えですが、部位によっては増し打ちの方が適切なこともあります。例えば窓枠やサッシ周りは形状によってはこれまでのシーリングを撤去できないこともありますし、無理に撤去しようとすると窓枠やサッシを傷つけてしまう可能性もあります。
窓枠やサッシを傷つけてしまうと、雨漏りする可能性も出てきます。街の外壁塗装やさんではサイディングとサイディングの繋ぎ目の部分については必ず打ち替えを行いますが、窓枠やサッシでは増し打ちを推奨しています。
シーリング材は打設直後には柔軟性もありますが、徐々に硬化し肉痩せや亀裂を起こします。
この傷んだシーリング材の上からシーリング材を増し打ちしても内側からひび割れが拡大し雨漏りを起こす原因になりかねません。
この際の補修方法はすべてのシーリング材を撤去し打ち直す、つまり打ち替え補修が必要ですので元よりシーリング打ち替えを行っておいた方が良いでしょう。サッシ等のシーリングは元々陰になる箇所が多く傷みにくいので増し打ちでも問題ありません。
外壁塗装と同時に行う場合、工程が前後することがあります
先打ちにも、後打ちにも、メリットとデメリットがあるのでどちらが良いとは一概に言えません。一番良いのはオートンイクシードなど長寿命のシーリング材を使うことでしょう。
サイディングの繋ぎ目は動くことを前提に作られています
ワーキングジョイントとノンワーキングジョイント
前述のようにサイディングやALCの繋ぎ目は寒暖による伸縮、揺れなどによる破壊を防止するために設けられています。この動くことを前提に作られている繋ぎ目をワーキングジョイントと呼びます。
ワーキングジョイントは2面接着
ノンワーキングジョイントは3面接着
動くことを前提に設けられているワーキングジョイントのシーリング材はサイディングボードやALCの側面部分だけに接着させ、シーリング材の背面(底面)には接着させないのが基本です。
背面(底面)には接着させないようにバックアップ材やボンドブレーカーを挿入します。背面(底面)も接着されてしまうと、その分だけ伸縮が制限されてしまうので、伸び代も少なくなります。
その結果、高性能なシーリング材であっても、剥がれて隙間ができてしまうということも起こりえます。
動かないことを前提に設けられたノンワーキングジョイントは防水性能から考えて3面全部にしっかりと接着される3面接着が基本です。
シーリング材の充填一つにしても、こういった知識を持っており、しっかりと施工してくれる業者を選ぶことが重要です。
お家の外廻りで最も傷みやすいのがシーリングです。モルタル外壁や金属サイディング外壁のお家ではあまり目立たないのですが、サッシ周りなどに充填されています。
窯業系サイディング外壁ではサイディングボードとサイディングボードの継ぎ目に充填されており、目視で点検することが可能です。古くなってくると裂けたり、ひびが入ったりします。
こちらのシーリング材では可塑剤が流出してしまい、痩せて表面が黒ずんでいます。可塑剤はベタベタしているので、染み出てくるとそこに埃が付着し、汚れてしまうのです。
また、こまかなひびも入っています。この程度の傷み具合で打ち替えるのお勧めです。
傷んでしまったシーリング材を撤去していきます。カッターで切り込みを入れ、手で引っ張り出します。
傷みが軽度のうちはこれでほぼほぼ取り除けるのですが、あまりにも劣化しているとボロボロと崩れてしまい、手で引っ張り出すことは不可能になります。
目地の側面に残ってしまったシーリング材はカッターで削り、除去します。そのままにしておくと、新しく充填したシーリング材の接着力が落ちてしまうからです。
お住まいが広いと一日に何回もカッターの刃を新しいものに取り替える必要も出てきます。
シーリング材とサイディングの側面の接着力を高めるため、プライマーを塗布します。このページ内でも触れていますが、窯業系サイディングの継ぎ目はワーキングジョイントです。
ある程度、動くことを前提に作られているので側面同士の二面接着になります。底面(画像の刷毛の先のグレーの部分)には接着させないことが理想です。
シーリング材を充填していきます。側面同士の二面接着といっても、底面にシーリング材を触れさせないように充填するなんて器用な真似はできません。
なので、シーリングが充填されても底面に接着しないようにバックアップ材などを入れてから充填します。シート状のものを入れて、そこに接着させることにより、底面との接着を防ぐのです。
専用のヘラで押し込んでいきます。中に空気を入れず、側面への密着度を上げるためです。
よく「均す」という表記を見ますが、それは微妙に違っています。押し込みながら、均していくというのが正確なのではないでしょうか。
ヘラの持ち方を変えて違う方向から、押し込みながら、均していきます。これで、ある程度固まったら、養生テープを剥がします。
完全に固まってしまうと、シーリング材に養生テープが固着してしまい、きれいに剥がせなくなります。半乾き程度で剥がすのが理想なのです。
シーリング工事が完了しました。シーリングの打ち替えには外壁塗装前に行う「先打ち」と外壁塗装後に行う「後打ち」があります。
今回の場合、これから外壁塗装を行うので、先打ちです。シーリングも塗膜で覆われるため、後打ちよりも長持ちします。外壁塗装とシーリングの打ち替えを別々に行うと、それぞれ足場代がかかって高額になってしまうので、まとめて行うことをお勧めします。
外壁にとってシーリング材は雨水の浸入を防ぐこと、建物の揺れに合わせた外壁材の破損を防ぐことを目的に欠かせない存在です。
シーリングとコーキングは外装補修において同じ意味・役割で使用されます。
外壁の種類・向きによって目地の位置は変わりますが、雨漏りを防ぐという目的からシーリング補修が欠かせません。
シーリングは太陽光や雨水によって劣化してしまい、安価なものでは3年程度で劣化し始めるケースも多いです。
シーリング補修工事を行うには足場仮設が必要不可欠になりますので、この機会に外壁塗装工事もお勧めいたします。
目地部分が黒ずんでしまうのはブリード現象を発生させる可塑剤が原因です。綺麗な外壁を保つためにはノンブリードタイプのシーリング材を使用しましょう。
シーリングの先打ち・後打ちによっては外壁塗装と工程が逆になる可能性もありますのでそれぞれのメリット・デメリットを把握しておきましょう。
外壁のシーリングは二面接着によって剥がれ・劣化を防いでいます。
シーリングはサイディングやALC等外壁材にかかわらずサッシ廻りにも施工されているため、どのお住まいでも補修の必要性があります。定期的なメンテナンスで外壁からの雨漏りを防いでいきましょう。