モルタル外壁に見られる軽度の劣化症状。その対処方法は?
モルタルの原材料はなんなのか?
まず、モルタルの原材料は何なのか?
それを知り、その原材料の特徴を理解することで
発生する劣化症状の原理がより深く理解できるでしょう。
「モルタル=セメント+細骨材+水」です。
・細骨材とは全ての粒が10mm以下、その内85%が5mm以下の骨材(砂利や砂)
「コンクリート=セメント+粗骨材+水」
・粗骨材とは5mm以上の粒が全体の85%以上含まれる骨材
セメントは水などで練って使う接合剤です。
粘土を含む石灰石や石膏を焼いて作った粉末状の材料です。
以上の事から分かるモルタルとコンクリートの違いは
含まれる骨材(砂や砂利)の粒の大きさが違うということです。
全体的に細かい粒が多く含まれたものがモルタル。
大きい粒が多く含まれているものがコンクリート。
以上の事からモルタルはコンクリートと原材料はさほど変わらず
圧縮に強く、引っ張りには弱いという特徴も同じです。
モルタル外壁はいくつかの層で造られており、
透湿防水シート→ラス下地板→防水紙→ラスという金属製の網を張ります
そしてこのラスにモルタルを塗ったところでモルタル外壁となります。
ではモルタル外壁に見られる劣化症状と対処法を見ていきましょう。
◆劣化が表れ始める年数◆
まずモルタル外壁の劣化が表れ始める年数ですが
一番最初の劣化としてはカビや苔の発生、チョーキング現象です。
これらの初期劣化が見られるのは
・新築時から8~13年前後
・塗り替えからは10~15年前後
塗り替え後の劣化発生時期は塗り替えで使用した塗料の
耐用年数によっても大きく違いがありますので注意しましょう。
劣化レベル小:カビや苔の発生
塀や隣家に風通しを塞がれている部分や、日当たりが悪い箇所、
植え込みなどに囲われている個所に特に発生しやすいカビや苔。
モルタル外壁は汚れやすく、特に表面がボコボコした仕上げのモルタル外壁には
その細かい溝に塵や雨水がたまりやすく、カビや苔の発生原因になってしまいます。
カビや苔が躯体、外壁を劣化させることはありませんが、カビ菌による人体の影響
美観の問題からも長期間の放置はあまりよろしくないでしょう。
対処方法
自分の手で届く箇所、狭い範囲のみでの発生ならば
柔らかいスポンジやブラシで優しく力を入れずに水でこすって落とします。
※強くこすると塗膜が剥がれる可能性もあるので要注意
広範囲に広がっている場合や手では落とせないレベルの場合、
高圧洗浄機を使用して洗浄します。
ですが高圧洗浄はただの水なので根っこのカビ菌は除去できません。
根っこのカビ菌を除去したい場合はバイオ洗浄を行います。
目には見えないような細部の穴の中にあるカビ菌まで除去できます。
劣化レベル小:チョーキング現象
外壁の表面を手でこすり写真のような白い粉が付着する状態を
「チョーキング現象」と呼びます。
これは塗膜自体の劣化サインで、モルタルに塗装されていた
塗料の持つ機能が働いていないですよというサインです。
その為外壁表面の防水性なども失われてしまっている状態です。
このタイミングで塗り替えを行えば
下地調整などの費用を大幅に抑えることができますので
チョーキング現象が見られたら塗り替えを行うのがベストです。
対処方法
チョーキングに関しては塗り替え以外対処法はありません。
洗浄などをしてもチョーキングが収まることはないので要注意。
劣化レベル中:クラックの発生
ヘアークラック
構造クラック
モルタルはクラックが発生しやすい外壁ですがクラックにも種類があり
①クラックの幅が0.3mm以下、深さ4mm以下のクラックを「ヘアークラック」
②クラックの幅が0.3mm以上、深さ4mm以上のクラックを「構造クラック」
上記2種類のクラックに分けられます。対処方法もそれぞれ異なり、
①のヘアークラックの場合、微弾性フィラーを擦り込む様に補修、
塗り替え時に下塗りに微弾性フィラーを使用ししっかり塗装する
②の構造クラックの場合は伸縮性、弾力性の高いコーキングを
クラック部分に充填させていきますが、深層内部まで充填させるため
一度クラックの周りをVまたはU字にカットしてからしっかり充填させます。
クラックをU字カットした状態
カットしたクラックにコーキングを充填させた状態
ベストはコーキング充填後に左官
コーキングのみの補修でも問題はないですが、
塗り替えの際にクラックを補修する場合は
コーキング後更に左官でモルタルを塗り
しっかりと蓋をしてから塗装を行うのがベストです。
左官で補修しても塗装すれば補修跡はキレイに隠れます。
塗装を行わずクラックのみを補修するのであれば
左官でモルタルを塗ってしまうと
かなり見栄えが悪いのでお勧めはできません。
ここまでの劣化であれば許容範囲内
ここまで紹介してきた劣化レベルまでなら許容範囲といいますか、
建物自体へ深刻なダメージを与えてしまうということは少ないでしょう。
(構造クラックや、複数のクラックを長期間放置していた場合は除く)
塗り替え費用が抑えられるのはチョーキング現象までです。
クラックが発生したら下地調整費用が掛かってきますので費用はかさんでしまいます。
お家を建てて6年後くらいからは定期的に外壁などを見ながら様子を見て
適切な時期に塗り替えが行えるようにしておくことが大切です!
次は今回ご紹介したものより重度な劣化状態と対処法についてご紹介していきます↓